【大阪万博2025】車椅子補助初心者が、90過ぎの「おばあ」を万博へ連れて行ったら、いつの間にか私がモンスターになっていた話

しろねこのひとりごと

バリアフリーな特等席

夫が飲み物を買いに行っている間に、大屋根リングに登ってみた。

この巨大なリング、ただリング上一周を歩けるだけではない。



登って気づいた。
パビリオンを一望できる特等席だ!



「いい眺めやなぁ。」の一言がすべてを物語る。
「おばあ」の視界からも見える、なんともバリアフリーな特等席。
各パビリオン前での演奏やダンスのイベントが上から眺め放題だ。

パビリオン前のイベントは、通りすがりに見ようものなら人だかりに塞がれ、車椅子の視界からは何も見えない。
最前列でないと耳で音だけを楽しむことになる。

大屋根リングの上ではそんな心配は必要ない。
ほとんどの人がじっとその場に留まることはなく、移動しながら楽しんでいる。

パビリオンの建物自体がどれも個性的で魅力がある。
リング上から見るパビリオンは、地上で見る顔とは違うし、
上からでしか、見えないものも多くある。
眺めているだけで楽しめる。


リングの上は、まだまだ、それだけではない。
リングは内側から外側になるにつれて高さが高くなっている。
内側の低いリングはパビリオン周りをぐるっと一周できる。
そのところどころに外側の高いリング側に行けるスロープがあり、車椅子でもより高い眺望を楽しむことができる。
もちろん車椅子を押す介助者の膝負担大のジグザグスロープにはなってしまうが、
登れば登るほど奥のパビリオンまで見渡せるので、登る価値はある。

せっかくなので、登り始める。
ジグザグスロープの“ジグ”を登りはじめて一歩、やはり重い!膝にくる。
まだ夏前だが、スロープ半分を登り終えて、汗だくだ。

まだ折り返しの“ザグ”が残っている。ヘロヘロになりながら、登り始めると更に勾配がきつくなり始める。
プラスアルファ、心臓破りの坂が待っていた。膝だけでなく、腕にもくる。
「おばあ」はパビリオンを眺めて「ええ眺めや、ええ眺めや。」と呟いていた。
その声に私の膝にも力が入る。

1番高いところに着いた!
上から見渡す景色は気持ちいい。会場が広いことを改めて実感できた。

会場の外側はただの、、、まぁ、夢の国のようなクオリティにはなってはいないので、内側にあるパビリオンを眺めた方が楽しめる。

「おばあ」の満足そうな顔を見て、疲れは飛んだ!と言いたいところだが、
疲れは飛ばないし、膝と腕は悲鳴をあげている。

ましてや、ここからが正念場だ!
急勾配のスロープ。下りはジェットコースターになりかねない!

悲鳴をあげている腕が引っ張られる。膝はブレーキ替わりのストッパーだ。
特に登りと下りの道が分けられているわけではないので、
前からは左右ランダムに人が登ってくる。

急によけることはできない。私の形相がひどかったのかもしれない。
下りてくる私たちを見て、皆、逆サイドに避けてくれていた。
すれ違いざまにお礼を伝えると、笑みを浮かべながら会釈してくれる温かい人ばかり。
温かさに感謝しながらリング内側まで戻ってこれた。

距離でいうとリングの5分の1程度しか歩けていない。
時間と体力があれば、ぐるっと一周したかった。
きっと夜のパビリオンも違う顔になって綺麗だろう。



疲労回復のため、芝生前でカステラブレイクだ。

ラクダのミルクを持った満足気な夫と合流。
ラクダミルクに満足気な夫が「カステラと一緒にどうぞ。」と「おばあ」に手渡す。

ラクダのミルクと知らずに飲む「おばあ」
「なんやこれ?何買ってきたん?なんか変な味すんで?ラクダ?そんなんええわぁ!」

タジタジの夫を横目で見ながら、私は静かに休息。
残念ながら、私の口にも合わなかった。





休憩を終え、予約した3つ目のパビリオンに向かう前にトイレ探しだ。
着いてすぐにトイレに行くなら、前回話した夢洲駐車場のトイレがおすすめだ。
私たちはテンションが上がり、着いてすぐのトイレはパスした。
だからそろそろトイレに行きたい。

ところが、色んな場所にたくさんあると聞いていたトイレは、なかなか見つからない。
建物が綺麗すぎてトイレと認識できずに通り過ぎているのだ!

感覚で分かる場所、、、
フードコート併設のトイレだ!
ここならあるだろうと、寄ってみた。

ビンゴッ!!!
よく見るトイレで安心した。

バリアフリートイレは広い。
だが、その広すぎる空間をめいっぱいに使うことになる。

それもそうだ。
車椅子の人と介助者が一緒に入る場合はその空間に2人も入るのだから、広くても狭い。
狭いというよりも、見事なまでに無駄な空間がない。ジャストだ。

そして、ジャストがよい!
なぜなら、車椅子から便座に移動しないといけないので、遠すぎても困る。
近すぎても車椅子が邪魔になる。

今までそんなこと考えもしなかった。
考え込まれたトイレに感銘を受けた。

壁に付いている台も初めて使ったので、正しい使い方なのか分からないが、まずは身体から荷物を外さないと何も始まらない。
とりあえず、台に荷物を置き、必要なものを準備。
正しい介助も分からないので、とりあえず汚さないようにとジャケットを脱がせたりはしたが、ジャケットを脱がす必要があったのかは分からない。
ありがたいことに「おばあ」はポールがあれば立つことはできるため、私の仕事は車椅子を退かしたり、衣服を整えてあげるぐらいだ。
トイレ内に鏡付きの手洗い場も真横にあるため、すぐに手も洗える。
清潔で快適なトイレだ。

トイレで迷ったら、感覚で探せるフードコート近辺を探すとよいかもしれない。


両手投げのモンスター




準備は万端!
1番のお目当てだった、モンスター退治の時間だ!
大阪ヘルスケアパビリオン モンスターハンターブリッジに向かう。

今回は場所も把握済みだし、移動時間も余裕だ。
EXPO2025 Personal Agentという携帯アプリを使うので、道迷いはない。
5分前には到着できた。

「おばあ」がどんな顔をするのか楽しみだ。
荷物は全てロッカーへ。
準備が整うまではモニターに流れている説明で予習だ。
「おばあ」はモニターを眺めながら投げる動作。真面目に予習をしている。



「おばあ」は真面目だ。
取扱説明書の類いは端から端まで読み込む。
そういえば、半年前に死にかけてから歩行器で1人トイレまで行けるようになった頃、「おばあ」の様子を見に行った。
その際にリハビリの成果を見せてくれたことを思い出した。

歩行器の取扱説明書はもちろん読み込み済だ。
まるで相棒を紹介するかのように、歩行器を見せてくる。

いつの間にか始まる「おばあ」の直販ショッピング。
ベッドからトイレまでの往復動線をシュミレーションで実際に見せ始める。
機能訓練の先生並みに詳しいのではないかと思うぐらい、歩行器の操作方法や注意点、ブレーキの使い所まで、私に教えてくれたことを思い出した。
私が歩行器を使うわけではないのに、、、と思いつつも熱心に伝えてくるので、ひと通り付き合った。
ふと、振り返って納得。

「おばあ」が人に教えたがるのは、「おばあ」の仕事が「教師」だったからだ。
今、腑に落ちた。




おばあ:「モンスターが出てきたら、手を振ったらいいんか?」
私:「手を振ったり、石を投げたりするみたいやねー!会場に入ったら、頭に映像を観る機械を付けるからびっくりしいなや。」
おばあ:「大丈夫や!」

体験時間が来たのでXD HALLの中に移動だ。部屋の中は暗い。
さっそく、ARデバイスを装着してもらうが、映像にピントが合っているか、自分で確認する必要がある。

「おばあ」のARデバイスのピントが合っているかは「おばあ」に確認するしかない。
おばあ:「見えてるよ!大丈夫、見えてる!」
私:「ほんまに見えてる?」

終えてから、結局見えてなかったなんてショックなことには絶対になりたくない!
疑り深い私は、何度も何度も「見えてる?」と確認してしまう。

「おばあ」は目の前に映る説明文を読み上げて、分かりやすくアピールしてくれた。
なんともスマートな表現で安心できた。
装着完了。

目の前に「こみゃく」のようなものが現れて、ホール内部に移動するよう促される。
車椅子介助は夫。
私は「おばあ」の真横で口頭フォロー。
扉は閉まり、360度、薄暗い空間だ。
始まる前の静けさにワクワクする。

「おばあ」を視界に入れながら、一瞬にして映像が広がる。
「おばあ」も「わぁ〜。」と出てきた猫に促されるまま、360度見回して、触れられそうな映像に手を伸ばす。
私もモンスターハンターに詳しく無いので、「ニャンちゃんや!手振るんやって!」と「おばあ」に伝える。

恐竜も現れ、石を投げることになる。
「おばあ」が石を投げている姿を確認して、私も石を投げ始める。

横では5歳ぐらいの男の子が大興奮で走り回りながら石を投げていた。
私も初めは片手で投げていたが、両手もいけるか?と思い、男の子に負けじと両手で石を投げ始めた。
私が1番興奮しているのではないか?と思いつつも、男の子に感化され、両手投げおばさんをやり遂げた。

映像も場面が変わり床が揺れる。
「おばあ」もびっくりしたのか、大きな「わぁ!!!」が出た。
私もそれに驚いた!地震のようだ!
360度の映像も迫力があり、モンスターハンターの世界にのめり込んでしまう。
あちこちからモンスターが襲ってくるし、石も投げるし、何が起こるか分からないドキドキ感。
なんせ私が大興奮。
「おばあ」を視界に入れるも、自分の興奮が先に来る!



「わぁ!」
私が驚く。
そして、「おばあ」を確認する。
「おばあ」も驚いている。



「わぁ!!!!!」
私が驚く。
そして、「おばあ」を確認する。
「おばあ」も驚いている。



「わぁ!!!!!!!」
私が驚く。
そして、「おばあ」を確認する。
「おばあ」も驚いている。



これを繰り返した。
どうやらモンスターを倒したらしい。

束の間の興奮の嵐。
両腕に残された疲労感。
両手で石を投げた証だ。
同世代だろう男の子の親には、大人げない私が1番のモンスターに見えただろう。

最後はニャンちゃんたちに迎えられ、出口へ移動。

「おばあ」は可愛らしく、最後までニャンちゃんたちに手を振っていた。
それを見て、「おばあ」もしっかり、モンスターハンターの世界にのめり込んで体験していたことがよく分かった。
「おばあ」にとって貴重な思い出になっただろうと思う。私にとっても。

後日、母から聞いたモンスター退治の話。
ここでの体験を指導するごとく、自宅でもデイサービスでも伝えたそうだ、、、笑
予習、実戦、指導。教師ルーティンなのだろう。

体験を終え、時刻は18時。
「おばあ」も少し疲れたようだ。
本当なら夕食でも食べたいが、ゆっくり食べられる場所はなさそうだ。
予約ものはこの体験で最後だったので、今からは自由だ。
移動しながら、考えることにした。





【次回のひとりごと】
思ったよりも空いている?
VIPな対応も。
車椅子移動は難しい。

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